火の鳥 鳳凰編 ~ふたりの仏師のものがたり

「おまえが生んだ仏はおまえだけのものだ だれにもまねられぬ だれにも盗まれぬ」

 

★我王

 「生きる?死ぬ?それがなんだというんだ 宇宙のなかに人生など いっさい無だ!ちっぽけなごみなのだ」


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奈良時代 ある漁村の一人息子として生まれる。
幼いころに父を亡くし、右目と左腕を失う。
貧しく障害を持った彼は、村の子たちに嫌われ、いじめられた。
ある日、いじめっ子のリーダを、怒りにまかせて崖から突き落としてしまう。
さらに逃走。立てこもった家で人質にとった子供まであやめてしまう。
旅の途中に焚火に出会った茜丸。その着物を奪い、さらにその右腕も刺す。
その後も我王は盗み、殺人を繰り返す。
しかし、良弁上人に出会い、徐々に人の心を取り戻していく。
やがて、仏師としての才能が開花する。
直情型でまっすぐな性格。憎しみ怒りが全ての原動力になっている。
 
 

 茜丸

鳳凰か…ああ…見たい ひと目でいい その鳥を見て彫りたい!」

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親、兄弟のない独り身だったが、若いうちから仏師としての才能が認められていた。
我王から右腕の自由を奪われる。が、創作意欲は余計に増し、ハンディキャップを乗り越え、更に腕を磨いていく。
ある日、時の権力者、橘の諸兄に火の鳥の製作を命令される。
まだ見ぬ伝説の火の鳥に想いを馳せ、旅に出る。
一本気で真面目な性格、権力者に翻弄されながらも製作には全身全霊をかけ、命も惜しまない。
しかし、富と名声を得てからは、名誉欲、権力欲におぼれ、その情熱と才能を枯らしてしまう。
 
 

★良弁

「おまえはくだらん人間だ 人間のクズかもしれん だがいまわしは知ったぞ おまえはその像を作るために生まれてきたのだ!」

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旅を続ける貧しき出家者。
大仏を建てる資金を集めのために、全国をまわっている。
実は名のある上人。捕らえられた我王を救い、旅に同行させる。
我王の仏師としての才能を引き出し、因果応報など仏教の教えを諭す。
やがて、自分は政治に使われた道具だったと悟り、奥州平泉の国分寺即身仏となる。
時に厳しく厳しい発言もするが、その底には慈悲の心が流れている。
 
 ★ブチ

「こんなものつくったってひでりは終わりゃしないんだよ!なにが仏だい 笑わせるない」

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年貢米を盗んだ罪で、村人に捕らえられていたところを茜丸に救われる。
うそつきでアバズレ。救ってくれた茜丸の事も散々にだますが、怒りもしない茜丸に心を許し、兄のように慕うようになる。
茜丸が観音像を彫るためのモデルとなり、それは茜丸渾身の傑作になった。
役人によって茜丸と引き離されるが、茜丸が出世したのち、都で再会を果たす。
  
 

★速魚

「私はうれしかったの だからおまえにとついだのよ」

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我王に拉致され、強引に妻に召し抱えられる。
乱暴な我王の為に尽くすが、疑われ、ついには殺されてしまう。
死後、その姿はテントウムシにかわる。
それはかつて我王が命を救ったテントウムシだった。