読書感想『この世でいちばん大事な「カネ」の話』西原理恵子

特に胸をうつのは、西原さんが上京してきて、一人暮らしの中、なりふり構わず、出版社に営業をかけ、絵で食べていくための道を切り開いていった話だ。貧しさの悲惨さを知っているからこそ、負の連鎖から抜け出そうと必死になる。予備校でも絵の評価は最下位だったという。最下位なら最下位の戦い方があると、下ネタを使っての笑いを取る営業と、イラスト外でのコメント力て勝負するという図太さとしたたかさ。

「たとえ最下位だろうと、どこがどう最下位なのか、自分のことをちゃんとよくわかれば勝ち目は必ず見えてくるはず。わたしは、自分をそう励ましながら、来る日も来る日も描いて、描いて、描きつづけた」

西原さんはそれはスポーツと一緒で、自分の得意と限界点を客観的にとらえることだという。

何十社と回った出版社の大人たちからの痛烈な批判から得るものもあったのだろう。だから行動をして、批判を聞き、自分を客観視する能力が必要になる。それはなかなかに辛いことだ。センスの塊に見える西原さんは、バリバリの体育会系の根性論者だった。

人は誰しも善い部分と悪い部分がある。そしてそれは白か黒かでなくたくさんのグレーゾーンがある。西原理恵子という人は自分の黒い部分をこれでもかと(ほとんどワザと)全面にだし、社会の理不尽さを叫ぶ。西原さんは自分をエンターテイナーというが、彼女は「叫ぶ詩人」である