Die with zero

この本はお金を貯めすぎることを警告する本だ。お金の貯め方、増やし方、稼ぎ方についての本はたくさんあるが、使い方にフォーカスした本は少ない。

アリとキリギリスの童話。

アリは正しいのかもしれないけど、働きすぎて、いつ人生を楽しむんですか?という疑問を投げかけてくれる本だ。

 

資産形成に夢中になっている人。節約志向のある人。堅実に生きている人ほど、刺さる内容が多いと思う。

 

この本の面白さは「お金はあればあるほどいい」という考え方に、じゃあ「お金を貯めてどうするの」という問いかけをしている点にあると思う。多くのデーターや事例を提示して、ただお金を増やすことが本当に幸せなことだろうか、と読者に問いかける。

 

著者はトレーダーとして若い頃から成功していた。ある日、友人に海外への貧乏旅行を誘われたことを断ってしまった。そのことを今でも非常に後悔しているそうだ。その友人はお金は失ったが経験という掛けがえのないものを得た。若いときにしか得ることができない経験がある、と著者は語る。

 

かといって、金は全て使いきれ、という極端なことは主張していない。著者が重要視するのはバランス。

『つまり、キリギリスはもう少し節約すべきだし、アリはもう少し今を楽しむべきなのだ』

読者にアリとキリギリスの最適なバランスを見つけなさい、と伝える。

 

アメリカ労働統計局が実施した消費者支出調査によれば、55才から10年ごとに平均して約1万ドル支出が減っていくそうだ。つまり『年をとると人は金を使わなくなる』。

年をとるとだんだんと欲望が減る。そして、お金を使わなくなるので、なかなか資産も減らないそうだ。ということは老後にお金を貯めすぎることは無意味になる。

 

著者は1969年アメリテキサス州生まれ。コンサルティング会社のCEO。エネルギー分野のトレーダーとして成功を収め、現在は1億2000万ドル超えの資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーをしながら、映画プロデューサー、ポーカープレーヤーとしても活躍している。

 

悔いのない人生を計画的に送りたい、と思っている人にとっては非常に参考になる本だと思う。自分にとって何が幸せなのかを改めて問い直させてくれる本だった。