この本は凄い。日本語が読める人すべての人が読んだ方がいい、と思ったぐらい凄い。勿論、松下幸之助のことは偉人として知っていたが、ここまで凄い、著書を残していたとは思わなかった。これを日本の小学校の道徳の教科書に使えばいいのに、と思うくらい、分かりやすく、本当の意味での愛国心が育てられるのではないかと思う。松下さんは日本の事を真剣に考えるナショナリストだと思う。僕はナショナリストには少し嫌悪感を覚えていた。何か他の人種に対して、排他的な発言をする人が多いいから。でも、松下さんは違う。真の意味でのナショナリストで、日本という国、日本人であることに誇りを持っている。
この著書で、松下さんが繰り返し言っていたことが、謙虚、素直、熱意、工夫と言った、極めて単純なことであるが、9歳から働き、戦争の真っただ中と、戦後を生き抜いた方だからこその重みと、微妙なニュアンスが読者の心に沁みいる。松下さんの語り口は、こうせよ、と言った格言的なものではなく、お互いこうしたいものだね、と優しく語りかける。
以下、印象に残った言葉
道
・自分には自分に与えられた道がある。
・しかし、所詮はこの道しかないのではないか。
素直に生きる
志を立てよう
大事なことはみずからの志である。
さまざま
ちがうことをなげくよりも、そのちがうことのなかに無限の妙味を感じたい。
真剣勝負
人生は真剣勝負である。だからどんな小さな事でも生命をかけて真剣にやらなければならない。
是非善悪以前
その人の人生は、90%までが、いわゆる人知を越えた運命の力によって、すでに設定されているのであって、残りの10%ぐらいが、人間の知恵、才覚によって左右されるといえるのではなかろうか。
生と死
・人はいつも死に直面している。それだけに生は尊い。
日々是新
・きのうはきのう、きょうはきょう。きのうの苦労をきょうまで持ち越すことはない。
・毎日が新しく、毎日が門出である。
視野を広く
視野を広く。どんなに広げても広すぎることはない。
心の鏡
自分の周囲にある物。いる人、これすべて、わが心の反映である。
日に三転す
「君子は日に三転す」一日に三度も考えが変わるということは、すなわち、それだけ新たなものを見いだし、生み出している。
なぜ
素直で私心がなく、熱心で一生懸命ならば、なぜと問うタネは随所にある。
花のように
どんな世の中になっても、あわてず、うろたえず、淡々として社会への奉仕を心がけてゆこう
本領を生かす
おたがいにそれぞれに完全無欠でなくても、それぞれの適性のなかで精いっぱいのその本領を生かすとことを心がければ、大きな調和のもとに自他ともの幸福が生み出されてくる。
くふうする生活
とにかく考えてみること、くふうしてみること、そしてやってみること。失敗すればやりなおせばいい。やりなおしてダメなら、もう一度くふうし、もう一度やりなおせばいい。
縁あって
人と人とのつながりには実は人間のいわゆる個人的な意志や希望を越えた、一つの深い縁の力が働いているのである。
あいさつをかわす。
私たちの遠い祖先から伝わってきたこのあいさつというものは、いわばおたがいの毎日の暮らしの潤滑油とでもいった尊い働きを果たしているのである。
サービスする心
どんな人にでも、探し出してくれば、その人だけに与えられている尊い天分というものがある。その天分で、世の中にサービスをすればよいのである。
長所と短所
人を助けて己の仕事が成り立ち、また人に助けられて己の仕事が円滑に運んでいるのである。
生かし合う
自己を捨てることによってまず相手が生きる。その相手が生きて、自己もまたおのずから生きるようになる。
責任を知る
自分に責任あると思うことまでも、他人のせいにすることだけはやめにしたい。
真剣に叱られる
ものの道理について真剣に叱る、また真剣に叱られるということは、人情を越えた人間としての一つの大事な勤めではあるまいか。
人間だけが
約束はおたがいの信用の上に花ひらく。
心を通わす
いかなるときにも素直に謙虚に、おたがいに心を通わし、思いを相通じて、協力し合ってゆきたいものである。
みずから決断を下すときに
自分自身を過大視せず、いやしめることなく、みずからのことは、みずからの力で処する
断を下す
要はまず断を下すことである。みずから断を下すことである。
判断と実行
いかに的確な判断をしても、それをなしとげる勇気と実行力とがなかったら、その判断は何の意味も持たない。
眼前の小利
眼前の小利にとらわれるな
善かれと思って
何事においても策なしというのが、いちばんいいのである。
カンを働かす
要は修練である。練磨である。カンを働かすことを大事にして、さらに修練をつみ重ねたい。
自問自答
・だがしかし、やっぱり大事なことは、他人の評価もさることながら、まず自分で自分を評価するということである。
・みずからに問いつつ、みずから答える。これは決して容易でない。容易な心がまえで、できることではないのである。しかし、そこから真の勇気がわく。真の知恵もわいてくる。
根気よく
・それがよいことであればあるほど、そしてそれが正しいと思えば思うほど、まずなによりも辛抱強く、根気よくつづけていく心がまえが必要であろう。
・みずからの正誤を世に問うためにも、まずは辛抱強く、根気よく事をすすめてゆくという謙虚な姿がほしいのである。
思い悩む
わからなければ、人に聞くことである。
心配またよし
・しかし本当は、それらのいわば人生の脅威ともいうべきものを懸命にそしてひたすらに乗り切って、刻々と事なきを得てゆくというところに、人間としての大きな生きがいをおぼえ、人生の深い味わいを感じるということが大事なのである。
・心配や憂いは新しくものを考えだす一つの転機ではないか、そう思い直して、正々堂々とこれと取り組む。
時を待つ心
・だが何もせずに待つことは僥倖を待つに等しい。
・自然の理はわがままな人情には流されない。冷たいのではない。静かに時を待つ人には暖かい光を注ぐのである。
岐路に立ちつつ
やはり次々と困難に直面し、右すべきか左すべきかの不安な岐路に立ちつつも、あらゆる力を傾け、生命をかけてそれを切りぬけてゆく―そこにこそ人間としていちばん充実した張りのある生活があるともいえよう。
困っても困らない
要は考え方である。決意である。困っても困らないことである。
転んでも
「転んでもただ起きぬ」心がまえが大切。
心配することを恐れるよりも、真剣でないことを恐れたほうがいい。
失敗か成功か
どちらに目をむけるか。一つに希望をもつ九十九に失望するか。失敗か成功かのわかれめがこんなところにもある。
紙一重
素直に見るか、見ないか、ここに紙一重の鍵がひそんでいる。
心を定めて
苦難がくればそれもよし、順調ならばさらによし。
懸命な思い
懸命な思いこそ、起伏があろうと坦々としていようと、ともかくもわが道を照らす大事な灯なのである。
窮屈はいけない
窮屈な場所に窮屈にすわっていると、血のめぐりも悪くなって脚もしびれる。
窮屈を避け、伸び伸びとした心でものを見考えてゆきたいものである。
一人の知恵
おたがいに神さまではないのだから、一人の知恵には限りがある。
わからないことは聞くことである。知らないことはたずねることである。たとえ分かっていると思うことでも、もう一度、人にきいてみることである。
一陽来復
頭で知ることも大事だが、身をもって知るということが何よりも大事。塩の辛さはなめてみてはじめてわかる。
自分の仕事
自分の仕事は、自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで、ほんとうは世の中にやらせてもらっている世の中の仕事なのである。
働き方のくふう
楽々と働いてなおすばらしい成果をあげられる働き方をおたがいもっとくふうしたいというのである。
しかも早く
念入りに、しかも早くというのが、今日の名人芸なのである。
引きつける
知識も才能も熱意がなければ無に等しいのである。
おろそかにしない
些細なこと、平凡なことそれを積み重ね積み重ねきて、そのうえに自分の知恵と体験とを加えてゆく。
見方を変える
何ごともゆきづまれば、まず自分のものの見方を変えることである。
ファンがある
そして、このありがたい自分のファンを、もっと大事にし、その好まれている自分のよさを、精いっぱい伸ばすようにつとめたい。
手を合わす
親切でうまくて、早くて、そして客の後ろ姿に手を合わす。
敵に教えられる
自分が自分で考えているようだけれど、実は相手に教えられているのである。相手の刺激で、わが知恵をしぼっているのである。敵に教えられるとでもいうのであろうか。
あぶない話
三べん事を画して、三べんとも成功したら、これはちょっと危険である。
世の中に絶対の確信なんぞ、ありうるはずがないし、持ちうるはずもない。みな一応のものである。
熱意をもって
何としても二階に上がりたい。どうしても二階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかす。階段をつくりあげる。上がっても上がらなくても…そう考えている人の頭からは、ハシゴは出てこない。
ノレンわけ
独立の営みをはじめるというあの自主的な心がまえまでも失ってしまいたくない。
同じ金でも
自分の金といっても、たまたまその時、自分が持っているというだけで、所詮は天下国家の金である。
自分のヒタイのアセがにじみ出ていないような金は、もらってはならぬ。
自得する
他に依存せず、みずからの力で歩むことの大事さを、みずからの身体でさとる。つまり自得するのである。そこから獅子本来のたくましさが芽生えてくる。
恵みにたいして感謝をし、その感謝の心で生き生きと働いたならば、次々とよい知恵が生まれて、自他ともにどんなにしあわせな暮らしができることか
こわさを知る
せめて何かのこわいものによって、これを恐れ、これにしかられながら、自分で自分を律することを心がけたい。
乱を忘れず
いついかなる変事にあおうとも、つねにそれに対処してゆけるように、かねて平時から備えておく心がまえがほしいもの。「治にいて乱を忘れず」である。
後生大事
仕事が成功するかしないかは第二のこと。要は仕事に没入することである。一心不乱になることである。
己を知る
敵を知ることもむつかしい。けれども己をしることはもっとむつかしい。
恵まれている
恵みにたいして感謝をし、その感謝の心で生き生きと働いたならば、次々とよい知恵も生まれて、自他ともにしあわせな暮らしが出来る
身にしみる
生命を失うかもしれないということほど、身にしみるものはない。
わが身につながる
人と人とが相寄って暮らしているこの世の中、どんなことに対しても自分は全く無関係、自分は全く無責任―そんなことはあり得ない。
教えなければ
教えずしては、何ものも生まれてはこないのである。
学ぶ心
学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である。
もっとも平凡な
・自他ともの真の繁栄への道は、本当はもっとも平凡なところにある。
・水が低きに流れるように夏がすぎたら秋がくるように自然の理にかえって、もう一度素直な心で考え直してみたい。
敬う心
だが人間には、ものみな、人みなのなかに敬うべき価値を見いだす能力が与えられている。
身につまされる
人間にとって、人生を歩む上において、身につまされるというこてゃ、やはり大事である。
真実を知る
つまり、ものごとの実相を知らねばならないのである。
自分の非
自分の非を素直に認めいつでもこれに殉ずる。
勤勉の徳
勤勉は喜びを生み、信用を生み、そして富を生む。
知恵の幅
わずかな人間の知恵の幅である。賢さの中にも愚かさがあり、愚かさの中にも賢さがひそんでいる。
まねる
人もまたみな違う。柿のごとく梅のごとく、人それぞれに、人それぞれの特質があるのである。大事なことは、自分のその特質を、はっきり自覚認識していることである。
心を高める
易きにつくのが人間の情であるとしても、易きがままの日々をくりかえすだけならば、そこにはただ、人間としての弱さが露呈されるだけであろう。
体験の上に
教えの手引きは、この体験の上に生かされて、はじめてその光を放つ。単に教えをきくだけで、何事もなしうるような錯覚をつつしみたいと思う。
信念のもとに
時代は変わった。人の考えも変わった。しかし信念に生きることの尊さには、すこしも変わりはない。
談笑のうちに
朗らかに語り合い、黙々として働く
求めずして
日々の暮らしの上でも、あまりにも他を頼み、他に求めすぎてはいないか。求めずして、己を正す態度というものを今すこし養ってみたい。