影響力の武器 ロバート・B・チャルディーニ著

カチッ、サー

人間、生物にはある出来事にカチッと反応し、サーと答える自動的反応がある。それはたった一つの特徴によって引き起こされる傾向がある。

この反応にはメリットデメリットがある。

メリットとしては貴重な時間やエネルギー精神能力の節約になる。

デメリットとしては間違いを犯しやすくなる(他の人間が何か利益を得ようと企んでいる時、間違いを犯す可能性が高まる)。

著者はこの影響力の武器の使い手から散々に騙されてきた。そのことがこの本を書く動機になっているそうだ。

この本で紹介する影響力の武器は、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性の6つである。

●返報性

他者から与えられた何かに対し、自分も同じようなやり方で相手に帰すよう努める。(ギブアンドテイク)

特徴1 非常に強い力を持っている
特徴2 望みもしない厚意を最初に相手から受けた場合にも適用される。(借りを作る相手を自分で選びにくくなる)
特徴3 不公平な交換を助長する場合がある。

『拒否されたら譲歩法』というものもある。これは最初に譲歩して、そのお返しとして相手の譲歩を引き出す。大きな要求を最初にだし、次にそれよりも小さな要求に引き下げる。例えば100個買ってくれと言い、次にじゃあ、20個だけ買ってくれ、と言う。

防衛法

最初の親切や譲歩は誠意を持って受け入れ、後で計略だと分かった時点で、それを計略だと再定義出来るようにしておく。

●コミットメントと一貫性

段階的要請法

最初に小さな要求を飲ませ、それから関連するもっと大きな要求を通す。意見を公表する(パブリックコミットメント)がその意見を持続させる。

⇒一貫した人間に見られたい⇒その立場を維持しようとする強い気持ちが働く。

人は自分自身が一貫性を保ちたいという心理がある。

この欲求は3つの要素から構成される。

1社会からの高い評価
2日常生活に有益
3複雑な現代生活をうまくすり抜けられる。

これは思考の近道となる。

初めにコミットメント(自分の意見を言ったり、立場を明確にする)をすると、人はそのコミットメントに合致した要求を受け入れやすくなる。それは行動を含み、強く強制されたのではない、と考えられる時、強く働く。

例えば、あるカリフォルニアの住宅地で『安全運転をしよう』という大きな看板の取り付けを依頼すると、承諾率は17%だった。しかし、ある特定のグループだけは76%の承諾率が得られた。そのグループは2週間前に「安全運転するドライバーになろう」と書かれた3インチ四方の小さなシールを貼って欲しいと頼まれていた。

このように取るに足らない小さな頼みを承知すると、規模がずっと大きい、内容が似ている別の依頼にも承諾しやすくなる。人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えるときに、その行為の責任が自分にあるとみとめるようになる。

防衛法

不当なコミットメントをさせられた時

⇒胃と心の奥底からの合図に耳を澄ます。心の奥底のサインは「今知っていることはそのままにして時間を遡ることが出来たら同じコミットメントをするだろうか?」と自分自身に問いかけること。

コミットメントと一貫性の原理を利用した戦術は個人主義的な社会、50歳以上の人々がひっかかりやすい。

●社会的証明

原理

ある個人が何を信じるべきか、どのような行動をするかを決める時に重視するのが、他者の行動である。この他者は多ければ多いいほど、その影響は大きくなる。社会的証明が最も強い影響を示すのは不確かな状況と自分と似た他者がリードする場合(類似性)である。例 バラエティ番組のあとからかぶせた、過剰な笑い声

集合的無知

周囲の人たちみなが周囲の人の反応を吟味している状況。

例えば誰かが街中で倒れている時、みんな誰かが助けを呼んでいるだろう、などと考え通り過ぎてしまう等。

人は不確かな状況にいると、自分と似た人の行動を自分の行動の指針とする。

防衛法

1類似した他者が行っている明らかに偽りの証拠に対して敏感であること

2自分の行動を決定する際は、類似した他者の行動だけを基礎にしないこと。

●好意

人は自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある。

・身体的魅力を持つ人は他社の態度を変化せる際の影響力が強い。

・類似性‥自分と似た人に好意を感じ要求を受けやすい

・称賛‥お世辞は好意を高める

接触‥快適な環境の中、接触が起こり、成功がもたらせる場合、好意が生じる

・連合‥好ましい事象と自分を結び付けることにより、他者の目に印象付けようとする行為

防衛法

もし相手に対して過度の好意を持っていると感じたら、やり取りから一歩退くのも大事。

●権威

人は権威者の意見に対して、思考を伴わない短略的な意思決定として服従してしまう傾向がある。それは正当な権威者への服従が正しいという考えを社会のメンバーに植え付けようとする体系的な社会化の訓練から生じている。

・本当の権威者は優れた知識と力をもっているのが普通なので、命令に従う事は適応的な行為である場合が多い。

・権威者に対しての自動反応は実体でなく、シンボルに反応してしまう傾向がある。その中でも、肩書、服装、自動車は本人も気づかないうちに、その影響力が強い。

・専門家は自分自身にとって少し不利な情報を私達に提供し、誠実に見せてから、後の情報を全て信頼させるというテクニックを使う場合もある。

防衛法

「この権威者は本当に専門家だろうか」「この専門家はどの程度誠実なのだろうか」この二つの質問を自分に投げかけることにより妄信を防ぐことが出来る。

●希少性

人は「数量限定」「最終期限」言った機会を失いそうな場面に遭遇すると、その機会をより価値あるものとみなす。

理由

1 手に入れにくいものは、それだけで貴重なものであることが多いので、その品物や経験の質を判定する。⇒てっとり早い材料となるから。

2 その品物やサービスが手に入りにくくとなることにより、自由が失われるという心理的リアクタンスが働くから⇒自由の喪失に対しての反応

・この心理的リアクタンスは生涯の大部分を通じて現れ、特に二歳児と十代は支配への反発と自由への渇望が大きくなる。この時期は制限に対してとりわけ敏感になる。

・希少性は商品だけでなく、情報にも適用される。驚くべきことに制限された情報は、より価値あるものとみなされ説得力をもつ。

希少性の原理が最もよく適用される条件

1 新たに制限が加わった場合

2 他人と競っている場合

防衛法

興奮しすぎに注意。

興奮していたら一度気を静め、なぜそれが欲しいか考え、その機会を評価するというステップを踏む。