父が死んで、すぐに伯父と結婚してしまった母親に嫌悪を覚えていたデンマークの王子ハムレットが、父親を殺したのが現国王の伯父だと知り、人間不信に陥るおはなし。
この作品も言わずと知れた名作だが、正直に言ってそこまで好きになれない。ハムレットが潔癖すぎて共感できないし、悩みすぎていて、行動があとからきてしまうので、イライラさせられてしまうのだ。この悩みが胆なのだろうとは思うけど…。以下、気になったセリフと共に傍白してみる。
国王の生命に対する悟りがみえる。
どんだけー
ハムレットに求愛を受けている妹のオフィーリアを心配してのセリフ。娘をもつ身としてはよくわかる。
心配する兄レアティーズに対しての返歌。二人の兄妹愛、知性を感じさせる。
フランスへと旅立つ息子のレアティーズへのはなむけの言葉。人生訓。
娘オフイーリアへの忠告。ユーモアを交えることで、ギスギス感がなくなる。
祝宴で騒いでいる国王たちを憂えてのセリフ。ハムレットの潔癖さ、気高さ、完全主義が伺える。一般人にとっては別にいいじゃーん、と思うけど、いずれ王となるものとしてはそうもいかない内面があるのだろう。
死に向かう復讐への行動になかなか踏み切れないハムレットはある意味、リアルな人間像といえる。
ハムレットが役者に注文をつけている。これは演出家や役者へのテーゼ、演劇論だ。役者でもあったシェークスピアの演劇への姿勢がかいまみえる。
ハムレットがホレーシオを褒めるセリフ。粋な褒め方。
ハムレットがホレーシオに向けたセリフ。重要な決断をするにあたり、精神的にまいっている自分だけの認知だけでなく、第三者のホレーシオの認知にも頼る慎重さ。憔悴している状態でも、ハムレットが冷静で頭脳明晰なことが分かる。
劇中国王が王妃に向かって言うセリフ。誓いや決意の儚さ、移ろいやすさを嘆いている。潔癖なハムレットの嘆きを代弁しているとも言えるか。
ハムレットが母親を問い詰めようとする前に、怒りのあまり過ちを犯しそうになる自分をいましめる。
そして、ハムレットと王妃の次のやり取り
なんという皮肉、なんという切り返しだろう。知性は凶暴なまでに相手の精神を傷つける。
なんとおしゃれなセリフ
あまり好きではない割にはたくさんアンダーラインを引いてしまった。ハムレットは深すぎてまだ、僕の理解が追いついていないのかもしれない。英語がわかればその深さをより味わえるのだろう。映画監督のサタジット・レイが黒澤明の『蜘蛛の巣城』(原作はマクベス)を見て絶賛してこう言ったという。「黒澤は英語が分からないからシェークスピアの魔術にはまり込み過ぎず、『蜘蛛の巣城』を作ることが出来た」と