ロミオとジュリエット 小田島雄志訳

親同士が敵であるロミオとジュリエットが恋に落ちるお話。単純なお話だが、純度の高い、短く儚い恋に、古今東西の人々の心を捕らえて離さない何かがあるのだろう。

「恋の相手はだれかと紳士的に聞いているのだ」ベンヴォーリオ
「瀕死の病人に紳士的に遺書を書けと言え、病める心にひどいことばはやめるのが紳士だ」ロミオ

恋に悩むロミオが問い詰めて来る親友ベンヴォーリオに言うセリフ。悩みながらもダジャレで応酬。

「ひとの言葉は善意にとれ、分別はいかなる知恵よりも善意にとるときこそもっとも賢明とみえるものだ」マーキューシオ

格言。

「大地は自然の母にして、また自然の墓場、墓として自然を埋めながら自然を生む腹ともなる」ロレンス

韻を踏みながら、自然の摂理を語る。

「だがお若いロミオ様もいまから捜しはじめたら、みつけたときにはだいぶおふけになっていいるかもしれないよ。」ロミオ

ロミオを捜しているジュリエットの乳母に向けたセリフ。ロミオは深刻ながらも冗談を忘れない。

「このようなはげしい喜びにははげしい破滅がともなう、勝利のさなかに死が訪れる、火と火薬のように口づけするときが四散しはてるときだ。甘すぎる蜜はその甘味ゆえにいとわしく、味わうだけで食欲も消えはてるもの」ロレンス

ロミオの激しすぎる愛を神父のロレンスが諌める。全ての物事にあてはまる格言だと思う。

「人殺しを許す慈悲は人殺しを育てるにひとしい」大公

責任ある立場の大公の厳格で誠実な人柄。

「どうやら苦しみがおまえの器量に惚れこみ、おまえは不幸と契りを交わしたようだな」ロレンス

つらい宣告をロミオに伝えなくていけないロレンスの胸の内。

「哲学でジュリエットが作れますか、町全体をひっくりかえせますか」ロミオ

ロミオを諭し、慰めようとするロレンスに向けてはなったセリフ。若さから来る美しく狂気なまでの純潔な思い。

「それ、金だ、人の心には毒よりおそろしい毒、このいとわしい世の中では毒よりも多くの人を殺す」ロミオ

ロミオが薬屋から毒薬を買ったときに言ったセリフ。これも人間を戒めるような人生訓だ。

全体的には切ないラブストーリーだが、マーキューシオやベンヴォーリオといった機知とユーモアに富んだキャラクター達のお陰で、悲喜劇ともいえる絶妙なバランスの作品になっている。