最後の一句 森鴎外著

横領の罪で斬罪にさせられることになった太郎兵衛。

父の命を救う為に、16歳の長女いちが自分と妹、弟達の命と引き換えに、父の斬罪を取り下げるよう奉行所に懇願する話。

西町奉行の佐佐は前任者から引き継いだ、この案件の処刑手続きが終わり、ほっと重荷をおろしていた。

そこにやってきた太郎兵衛のこどもたちを訝しく感じる。誰かにそそのかされてきたのではないかと疑いの目を向ける。

しかし、いちの態度は凛としていて、その決意表明は奉行所の大人たちを驚愕させる。「お上の事に間違いはございますまいから」

この言葉に佐々は驚愕と同時に憎悪と末恐ろしさ感じる。

結末はここでは記さないが、感想として、いちの存在が『山椒大夫』の安寿と重なった。森鴎外は、凛とした真剣な少女の目が好きなのだな、と思う。

わけの分かっていない弟や妹たちが、可愛いらしく、いじましい。そう、子供というのは、ドキっとするぐらい真剣な目をする。

それは大人の心を射抜く。それは純粋であり、少し恐ろしさも感じる。

イスラム国の少年兵や、特攻隊で死んでいった少年兵。

彼らもいちと同じ目をしていたのではないか。
疑いもなく神を信じる目。

それは確かに、狂おしいまでに美しい。が、それを利用しようとする大人は地獄に堕ちろ!と思う。