いやな気分よ、さようなら デビッド・D・バーンズ

この本はうつ病の治療本である。
認知療法といって自分の考え方の歪みを気づかせ、それにより病気を治していくというものだ。
この本を読んだだけで病気が改善され、その後も再発することなく、元気に過ごしている人もたくさんいるそうだ。
うつ病のバイブルと呼ばれている。
感情というのは考え方から来るもので、自分の考えの歪みに気づき、正しい考え方をする事で、感情も良いものになっていくという。
良くないこと
悪くないこと
意味のないこと
を認知しそれをどうとらえるのか。
 
うつ病を引き起こす十種類の認知のゆがみ。
著者が長年の研究と、臨床試験の結果生まれてきた、この本の中で最も力を入れて、書いた部分だ。
 

認知のゆがみ

1 全か無か思考

ものごとを白か黒かのどちらかで考える思考法。少しでもミスがあれば、完全な失敗と考えてしまう。完全主義

 

2一般化のしすぎ

たった一つの良くない出来事があると世の中すべてこれだ、と考える。

 

3心のフィルター

たった一つの良くないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように。

 

4マイナス化思考

なぜか良い出来事を無視してしまうので、日々の生活がすべてマイナスのものになってしまう

 

5結論の飛躍

根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう

 a 心の読みすぎ:ある人が自分に悪く反応したと早合点してしまう
 b先読みの誤り:事態は確実に悪くなる、と決めつける

 

6拡大解釈と過小評価

自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。逆に他人の欠点を見逃す。双眼鏡のトリックとも言う

 

7感情的決めつけ

自分の憂鬱な感情は現実をリアルに反映している、と考える。「こう感じるんだから、それは本当のことだ」

 

8すべき思考

何かやろうとする時に「~すべき」「~すべきでない」と考える。あたかもそうしないと罰でも受けるかのように感じ、罪の意識をもちやすい。他人にこれを向けると、怒りや葛藤を感じる。

 

9レッテル貼り

極端な形の「一般化のしすぎ」。

ミスを犯した時に、どうミスを犯したかを考える代わりに自分にレッテルを貼ってしまう。

「自分は落伍者だ」他人が自分の神経を逆なでした時には「あのろくでなし!」というふうに相手にレッテルを貼ってしまう。

そのレッテルは感情的で偏見に満ちている。

 

10個人化

何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合にもじぶんのせいにしてしまう。

 

 

この十種類のゆがみが、うつ病の多くの症状を引き起こすもとになっている。
どれかひとつではなく、複数あてはまっているものもある。
まずは患者に自動思考(自然に思い浮かんでしまういやな思考)を書き出させ、10の歪みに当てはまるものがないか、考えてもらう。
そして、それに反論する合理的な反応を書き出してもらう。
(この書くという行為が重要な意味をもつ。書くことにより、その事がらを客観視することができる)
それを冷静に分析し、ポジティブな思考へと転換させるトレーニングをするといった具合だ。
 
うつ病になると、自分を不当に責め、自己評価が下がり、自己嫌悪に陥る。
他人がいくら、その考えの歪みを指摘しても、当の本人は、思考の迷路に迷い混んでしまい、中々気づけない。
この本はいかに患者本人に思考の歪みを気づかせるか、にページを割いている。
それには書き出し、自分で気づいていく地道なプロセスが必要なのだ、と。
僕もこの本を読んだだけで非常に気分が良くなった。
自分はうつ病ではなかったが、10の認知の歪みに関しては、当てはまるなー。
こういう思考をしてしまう時があるな、というものがあり、非常に勉強になった。
『感情は考えの後からついてくる』
『自己評価を高める事が幸せな気持ちを起こさせる』
ということは、大きな気づきだった。
『完全主義をやめ、中ぐらいを目標にたて、自己満足度をあげる』
という考え方も、仏教の中道精神に通じるものを感じ、興味深かった。