脳が変わる考え方 茂木健一郎著

2010年に書かれた著作。茂木さんは日本の状況をかなり憂えている。学校も企業も、チャレンジ精神を失い、失敗を恐れ保守的な人たちばかり作られてしまう。基本的にこの本はインターネットがもたらした経済の変化。それに伴い、必要とされる人間が本質的に変わってきた。失敗を恐れずにチャレンジすること、失敗に寛容な世界、コミュニケーションと創造力の重要性を説いている。

以下、印象に残った言葉。

 

●子供にとっては、大切な人に見てもらっているということが大事。それが「安全基地」となる。

茂木さんは一人の人間として創意工夫し、新しいことを生み出しながら生きていくためには「安全基地」が必要であると説く。

今まで日本人は学歴や所属、肩書きに「安全基地」を見出してきた。「安全基地」を作るのは難しい事でない。

ただ、子供がしていることを見ているだけでいい。親は今までの常識にとらわれてあれこれ言わずに、ただ見守ってあげればいい。

 

●起こっていることを必然として受け入れて脳は働く。

哲学者スピノザは「エチカ」の中で人間の本質として遇有性をあげている。

茂木さんは遇有性の海に飛び込め、という。人間の脳は偶然の環境に適応する能力を持っている。遇有性の海に飛び込むためには、精神の安全基地が必要である。

インターネットは世界と繋がっていて、何が起こるか分からない不確実な世界。日本の会社は、何が起こるか不確実なものを前提にシステムや物事を考える土壌がない。

実は100%確実なものなどはなく、脳も100%確実なものは喜ばない性質がある。

 

●何が起こるかわからない未知の状況に置かれたときに、脳がワクワクして楽しんでなかったらこの世界に適応できない。

こどもの頃に台風が来たときのワクワク感。どうなってしまうんだろう、という状況を楽しむこと。

 

●考え方の相違。違う角度から複眼的に物事を見る。

ハーバード大学では自分の意見を言うことを求められていない。前の人が言ってないアングルから、新しい考えを言うことを求められる。

Aという視点に対してBという視点を提示がだされる。みんなで出し合ってそれが誰から出たのか等は関係なく意見を並べてみて、考えるのがブレインストーミングの目的。これにより、物事を多面的にみる視野が広がるという事だろう。

 

●感動というのものは巧妙に脳を傷をつけられること。

茂木さんは幼少期に読んだ、アインシュタインの伝記が自分にとって衝撃的で、その傷は現在にも至るという。感動が脳の傷というのはメタファーだと思うが、素敵な表現だなあと思う。

人間の脳がもともと持っている最もすばらしい性質はコミュニケーションとクリエイティビティ。この二つはコンピューターでの再現が難しいとされる。とらえどころのない不規則性が人間のもっている欠点であり、長所でもあるということだろう。

 

●創造性とは側頭連合野の経験×前頭葉の意欲

脳の側頭連合野に蓄積された色々な要素が、組み合わせが変わって出て来ることが創造性。前頭野が「こういものが欲しい」「こういものが作りたい」と要求を出すことにより側頭連合野から情報が引き出される。

年をとると創造性が落ちてしまうのは前頭葉の意欲が足りないから。だから意欲のあるじじいは最強である。年をとると現状維持の保守的にながれてしまい、欲求が落ちてしまう。だから、つねに現状に満足しないことが大事。多様性を身に付けることも大事。組み合わせのレパートリーが増える。色々な絵の具を持っているという感覚。振り幅が広ければ広いほど、創造性が強く生まれる。